縮約のすすめ(4/14現上-1)


このカテゴリの記事は毎回の授業内容についての記録です。主に受講生を対象とした記事ですが、塾外の方にも雰囲気が伝わればいいなーと思って書いてます。

この授業は「現代文上級」国公立二次試験や難関私立大学入試問題への対応力を磨きます。

 

「縮約」しましょう

縮約ってどういうこと?

「縮約」という言葉、ご存知でしょうか。「要約」なら知っているけど…という方も多いんじゃないでしょうか。

この「縮約」という言葉、もともとは国語学者の大野晋さんが提唱したもので(それ以前にもあったのかもしれませんが、僕は寡聞にして存じませんので…)大野さんの著書「日本語練習帳」によると

縮約とは、要約することや要点を取ることではなく、地図で縮尺というように文章全体を縮約して、まとめること。(日本語練習帳)

というものです。

 

ちょっとやってみましょう。

ザクッと言えば「縮約」というのは、「文章の意味が変わらないように、そのまま縮める」というふうに考えてもらうといいかと思います。

んじゃ実際に練習してみましょう、少々古いテキストですが…以下を見てください。

もともと病はどのようにして病となるのか―。それが病であると、自分あるいは周囲が意識し認識する―病識をもつ―ことによってはじまる。(立川昭二「見える死、見えない死」より)

では、ちょっと見ていきましょう第一文

”もともと病はどのようにして病となるのか。”

これは「問いかけ」の形です。「問いかけを見たら答えを探す」これは読解の鉄則のひとつですよ。「問いかけ」というのはそれ自体が重要な意味を持つ、というよりは、話題を喚起し、その答えに対して読者の意識を向けさせる働きをもつのです。

今回の場合、どうもその直後に「答え」が示されているようですね。

ではその「答え」の部分

 

”それが病であると、自分あるいは周囲が意識し認識する―病識をもつ―ことによってはじまる。”

ダッシュ記号(―←こいつですね)は様々な役割で使われますが、ここでは「言い換え」を示していると考えられます。つまり

”それが病であると、自分あるいは周囲が意識し認識する”というのをより短く言い換えると”病識をもつ”になるわけです。

縮約というのは「文章を縮める」ことですから、同じ内容を繰り返す必要はない。できるだけ同じことを説明するならできるだけ短く、簡潔に表現していく、そういう作業です。

というわけで冒頭の文を「縮約」してみるとこんな感じになります

病は病識を持つことではじまる。

こんなふうに、もとの文(章)よりずっと少ない文字数で、内容としてはほぼ同一の文(章)を作っていく作業が「縮約」です。

どうして縮約が練習になるのか?

「要約」をしていくためには、まず文章全体の流れをつかみ、その中から要点を見出して、自分なりに再構成していく必要があります。

「文章全体の流れをつかむ」というのは、文章全体を漠然と読んだ結果なんとなーくつかめる「感じ」というのとは違います。一つ一つの文、段落、その意味を丁寧に追っていった結果として、それぞれの部分の相互関係の集積としての文章構造を把握する、ということです。

よく文章を読んで「全体的に何が言いたいのかよくわかりません」という感想を持つ人がいますが…そういう場合「じゃあ細部はちゃんとわかっているのかな?」というのを確認しなきゃいけません。細部の理解が不十分なまま、なんとなく全体像をつかもうとしても、それは「文章を正確に読み解く」という目的にかなうものにはなりません。

実際に文章を読む現場では、まずは目の前の文、目の前の段落を一つ一つ理解していく作業が必要です。で、そういう作業を目に見える形にしていくのが「縮約」です。

同一内容の言い換え

これはもう口を酸っぱくして言いますが、文章を読み解く上で最も重要なポイントは「同一内容」の把握です。Aの記述とBの記述、これは同じ事を別の言い方で説明してるんだからね!!ということですね。

Aの記述とBの記述、一読しただけではどちらもよく意味が分からない…というようなとき、「A=B」だということさえ理解していれば、Aの内容とBの内容のそれぞれを手がかりに、もう一方の内容を考えてみることができる。ところが、「A=B」ということ自体理解していなければ「わからないことが二つ」並んでいるばかり…ということになってしまう。

同一内容の理解の有無によって、文章全体の難度は何倍も変わってくるんです。

先の引用文でも説明したとおり、「縮約」という作業はこの「同一内容」の把握が非常に重要になってきます。しっかり縮約してると「これとこれ、同じことじゃないの。二回書く必要ないじゃないの」ということに気づく場面がたくさんあるはず。そういう経験が読解力を磨いていくわけです。

 

「書く練習」としての縮約

ここまで、読解の訓練としての縮約に焦点を当ててお話をしてきましたが、一方で縮約には「書く練習」としての側面も当然あります。優れた書き手の書き方、論旨の組み立て方を学びつつ、それをできるだけ短く書き留めるためには自身の表現の引き出しも必要になってきます。なにより「実際にペンを握ってたくさん文字を書く」ということ自体、大切な練習です。

 

さいごに

色々と説明してきましたが、そんなに難しく考える必要はありません、とりあえず「えいっ」っとやってみましょ。別に完璧な文章を書くことが目的ではないですし、慣れてくればそんなに時間もかかりません。例えば現代文の授業で扱った問題文を使えば、初見でもなし、解説をきちんと聞いていれば内容も大体頭に入っているはず。いい復習にもなります。

「現代文を強化したいけど、何やっていいかわからない」という方に「縮約」はお勧めの方法です。ぜひぜひ試してみてくださいね。

 

 


投稿者: 大森 太郎

升形国語塾の代表をやってます。

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