さて、古文初級です。先週一回目の授業のときには更新をさぼっちゃったんで、この記事が一本目ですね。
この授業では文語文法の初歩の初歩から初めて、センター試験レベルへの到達を目指します。基本的には実際に文章を読みながら必要な文法を学んでいきますが、今回はそこに入る前の前提知識の確認です。
内容としては仮名遣いからはじめて助詞の省略・文節の役割(主語・述語・修飾語・接続語・独立語)・自立語と付属語…というあたり。特に難しいということもないと思いますが、一通り頭に入れておきましょうね。
今日ブログで取り上げるのは「活用形の用法」について
活用形の用法
活用語(動詞・形容詞・形容動詞/助動詞)を学習する際に、いわゆる「活用表」は非常に重要です。
品詞 | 基本形 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令系 |
活用の種類 |
動詞 | 咲く | さ | か | き | く | く | け | け | カ行四段活用 |
こういうやつですね。今回はこの中の「活用形」について詳しく見ていきます。それぞれの活用形がどのような場合に使われるのか、というのを確認していきましょう
未然形の用法
1.「未だ生じていない事態」を示す
未然形は名前の通り、「未だ生じていない事態」を示す際に使われます。
具体的には、助詞や助動詞を伴って「仮定・推量・意志・打消・使役・尊敬」などの意味をすときに使われます
花、咲かば…/花が咲くなら…(仮定)
花、咲かむ。/花が咲くだろう。(推量)
こんな感じです。
「使役」が未然形なのはわかりますね。人に何かをさせる、というのは、その何かが未だなされていない場合です。例えば「生徒に問題を解かせる」ことができるのは、まだ問題が解けていない生徒に対してのみですよ。
さらに、「使役」は「尊敬」に通じます。高い地位にある人は人を使役できるわけですから。「大阪城を作ったのは誰?」「豊臣秀吉!」「ざんねーん、大工さん!!」っていう古典的ジョークもありますね。
未然形接続の助動詞
ちょっと先取りになりますが、確認しておきましょう。代表的な意味のみ記します
- 推量:む・むず
- 願望:まほし
- 反実仮想:まし
- 打消:ず
- 打消推量:じ
- 使役・尊敬:す・さす・しむ
- 受身・自発・可能・尊敬:る・らる
連用形の用法
連用形にはいくつか重要な用法があるのでしっかり確認しておきましょう。
1.連用修飾語になる
まあ、これは基本ですわね。
花いとをかしく咲く。/花が大変素晴らしく咲く。
この用法はほぼ形容詞・形容動詞に限られます。動詞や助動詞にはみられない、と考えてOKです。
2.中止法
文をいったん区切ったうえで後に続ける場合に連用形を用いる場合があります。
雨降り、風吹く。/雨が降り、風が吹く。
この用法は多くの場合、直後に読点(、)を伴います。(ただし古文の原文には現代と同じような句読点は付されていません。あくまで現代の読者が読みやすいように補われているだけです)
3.過去及び完了の助動詞に続く
過去・完了の助動詞は原則的に連用形接続です
花咲きぬ。/花が咲いた。
4.いくつかの助詞に続く
「て」「して」「つつ」など、いくつかの助詞は連用形接続となります。
花咲きて、春来る。/花が咲いて、春がやってくる。
連用形接続の助動詞
連用形接続の助動詞は以下の通りです
- 過去:き・けり
- 完了:つ・ぬ・たり
- 過去推量:けむ
- 願望:たし
ここでちょっと補足説明が必要ですね
完了の助動詞「り」の接続
文語文法における完了の助動詞は「つ・ぬ・たり・り」の4語とされますが、このうち「り」のみは例外的な接続をします。まずは「サ変動詞の未然形」
我、奇襲に成功せり。/私は奇襲に成功した。
もう一つは四段活用動詞の已然形
花咲けり。/花が咲いた。
こういう接続は他に例のない、「り」だけのものです。そういうこともふまえて
「さ(サ変)み(未然形)し(四段)い(已然形)リカちゃん」
なんて語呂合わせもよく知られています。
願望の助動詞「たし」について
上の解説で「過去や完了の助動詞は連体形接続」と述べました。ところがこの「たし」はちょっと毛色が違いますねえ。事実、同じく「願望」の意味を持つ助動詞「まほし」は未然形接続であることはすでに確認しました。では、どうして「たし」は連用形接続なのか。
じつはこの「たし」、の原型は形容詞「甚し(いたし)」であるとされています。「甚し」は文字からも判断できるように、もともと「程度がはなはだしい」というような意味なのですが、それが転じて助動詞として用いられるようになったようです。もとが形容詞である、と考えれば連用形に接続するのも納得です。
ちなみにこの「甚し」は他にもいくつか派生語を作っています。一つだけ挙げておきましょう
「愛づ(めづ)」という言葉があります。これにはもちろん「愛する・好む」という意味もあるのですが、本来の意味は「感心する・褒める」です。
この「愛づ」に「甚し」がくっついてできた語が「愛で甚し(めでたし)」です。「褒める気持ちがはなはだしい」というところから「素晴らしい」という意味で用いられます。
さてと…ちょっと長くなったので続きは明日にしましょうかね。ではまた~。
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